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スリーエコ・ニュース (Srieko News)

Srieko News号外 221012(高原列車)

October 17, 2012 at 1:04 pm

高原列車一等客室の乗客 エッラ(Ella)

皆様

 

お茶畑で有名な高原地帯に、久しぶりに足を延ばしました。

 

今スリランカは“のびざかり!”の国。至る所で道路工事や整備をしています。この間まで、あんなにひどかった道が見事に変身していることに思わず感激するのもつかの間、目的地までのその先はまだ工事中で以前よりひどい道だったり・・。

定期的に道路状況を把握していないと、せっかく遠路はるばるスリランカにいらして下さったお客様にご迷惑がかからないとも限りません。

今回の旅行はその道路視察はもちろんですが、高原列車に乗ることが第一の目的でした。

お問い合わせの多いスリランカ鉄道の旅を、時間の限られた日本のお客様にも楽しんで頂けるよう、何とかSrieko風にご紹介、ご提供できないものかと考えたからです。

乗車したのは、エッラ(Ella)という山の中の小さな田舎町。けれど鉄道目的の欧米人客が多いため、けっこうしゃれたレストランや喫茶店が多く、驚かされます。

エッラのおもちゃの国のようなかわいい駅を朝10時に出発。下車するのは約2時間後、“リトル・イングランド”と呼ばれる避暑地・ヌワラエリヤ(Nuwara Eliya)。緑生い茂る山道を重そうに、列車はゆっくり進んでいきます。

乗り込んだ一等車は、車両の片側が大きなガラス張りで、美しい景色が一望できます。

かつて乗った時と同じです。椅子が以前より座り心地が良いと感じたのは、車両を修繕したからではなく、(以前のような旅行者ではなく)スリランカに移り住んだ私がこの国のスタンダードに慣れたせいだったのでしょう。

「ポポー、ポポー」と蒸気機関車のように音を立てて進む列車。美しい山の光景に、右斜めの白人男性は高価そうなカメラのシャッターを何度もカシャカシャさせています。

緑色の景色の間から飛び込んでくる、平屋建ての簡素な小学校、牛飼いをてこずらせている子牛、小さな畑を耕す農夫、手を振る男の子と赤ん坊を抱いたお母さん・・。スリランカならではの山の景色です。

座ることに飽きると、デッキへ。乗降口のドアは開いたままで、座席の窓から受ける何倍ものさわやかな風を体中に感じることができます。スリランカ・ペースで走る列車に、危なさも怖さもありません。

 

1時間が経った頃、停車した小さな駅で、物売りが声をかけてきます。スリランカ人の初老の男性が買っていらっしゃるので、「それは何ですか?」と聞くと、小さな袋に入った中身は、小枝についた鮮やかな赤い実でした。

英語は話せないらしく、「おひとつどうぞ!」と身振りで袋を差し出して下さいます。

たった今、木から摘んできたばかりといった感じの、青木のにおいのまざった赤い実は、木苺のような甘酸っぱい味です。次の駅で売りに来た際、私も買うことにしました。

“木苺売り”は列車の外から声をかけてきますが、車内に入ってくる売り子もいます。1駅分の切符が買えるだけ“おいしい商売”なのか、はたまた無賃乗車か・・。

彼らはピーナッツ売り、丸い形のスリランカ・サモサ売り、そしてポットとプラスティックの使い捨てカップを手にしたコーヒー売りです。

スリランカの列車の中で、コーヒーが飲めるなんて、まるで日本の新幹線並み・・。

もちろん、本格コーヒーではなくネスカフェ、そして売り子は“きれいできりっとしたお嬢さん”ではなく、“サロン(スリランカ風腰巻)を巻いた山焼けしたおじさん”の違いはありますが・・。

かつてこの列車に乗り込んだとき、空腹に耐えかね食堂車(=売店車)で口にしたものは、ホットドック型のパンに、一切れのゆで卵と玉ねぎだけが入った、質素なサンドイッチだったことを思い出しました。

「戦争が終わるのも、もうすぐのことさ・・」と30年続いた内戦に、持ち前の楽天気質で耐えてきたスリランカの人々。平和が訪れた今、これから先、いい方向に進んで行ってほしい・・、私の心の中で、かつてと今のスリランカが交差していったとき、車内が小さなざわめきに包まれ、現実に引き戻されました。

乗客がほとんど、進行方向の左側に集まっています。ヌワラエリヤが近づき、延々と広がる紅茶畑の向こうに滝が見えます。遠くからでも、その滔々とした水の流れがわかります。

ご自慢のカメラをしばらく膝の上にのせていた白人男性も、また“写真家”に戻っています。スリランカの海岸部とは全く異なる、美しい高原の風景です。

この先、国が少しずつ発展していっても、この美しい景色も、スリランカ時間で走る高原列車も、スリランカの人々の笑顔も変わらないでいてほしい。

車掌さんがわざわざ「次はヌワラエリヤ駅ですよ」と知らせに来て下さったとき、そう祈るような思いでデッキに向かいました。

スリランカ・ゆっくり列車の旅を楽しむあなたには、どんな思いがよぎるのでしょうか。

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