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7月5日 迫るハイパーインフレ危機@スリランカ

 

 

スリランカでは先月6月21日に、経済優先で全国ロックダウンは解除されたものの、依然、行動制限、移動制限、局地的街封鎖など諸々の制限や対策が毎週更新されており、不安定な状況が続いています。また、デルタ異変種(インド型)の感染も徐々に全国へ広がってきており、8月~9月が感染ピークになる可能性があると先日報道がありました。

 

日本外務省の海外渡航レベルも5月18日以降「レベル3=渡航中止勧告」となっており、十分注意が必要です。

 

ところで全国ロックダウンが終わり、ここ二週間のニュースで目に付くのは、武漢ウイルスに並んで中央銀行を中心とした金融関係の報道!何かよからぬことでも起きるのでは..ロックダウンの次はノックダウンか!?

武漢ウイルスが始まってはや1年半、世界経済は一部の国を除き、ほぼ全世界的に低迷していますが、スリランカの場合は特に経済構造が脆弱なため、不況の波をもろに受けており、物価は上がりっぱなし..ハイパーインフレの兆候が出てきたか!?

 

1.急激な外貨準備高不足

武漢ウイルス・パンデミック以前から、これと言って大した基幹産業の乏しいスリランカは、他の発展途上国同様に慢性的な貿易収支の赤字を抱え、その赤字を海外出稼ぎ労働者の外貨送金と観光業による外貨獲得、海外からの証券投資、資本投資、海外からの借金等で、経済のバランスを取ってきたのですが、パンデミックの影響でそれぞれのバランスが大き崩れ急激な外貨準備高不足に陥っています。

貿易収支 世界的な経済低迷および国内産業低迷、原油高による、貿易赤字急増⇒外貨減

●海外出稼ぎ労働者の失職およびスリランカ帰還による外貨送金の大幅減⇒外貨減

●武漢ウイルス・パンデミックによる観光業界の低迷による外貨獲得の大幅減⇒外貨減

●スリランカ国内外の経済低迷による海外からの証券投資、資本投資の大幅減⇒外貨減

 

 

2.外貨建て借入金増大

このように外貨獲得する全ての項目について、外貨収入減の状態が続いており、それを補うためにIMF、中国、日本をはじめ色々な国からの外貨建て借金が増大している状態です。

また政府は国外への外貨流出を極力防ぐため、生活必需品以外の輸入品に制限をかけたり、輸入代金の支払期限延期など金融制限を昨年来行っていますが、既に支払いを一年以上延期しているため、そろそろ貿易相手方も我慢の限界かと思います。これも借金の一部ですので、国の外貨建て短期借入金が増えていると考えてよいかと思います。

●IMF、中国をはじめとする国々からの外貨建て借入金増大

●輸入代金の支払期限延期など金融制限による外貨建て借入金増大

 

3.国内経済対策によって引き起こるルピーのだぶつき

一方国内産業に目を向けると、感染防止策による数度のロックダウンと、世界経済の低迷を受け、ほとんどの業界が大きなダメージを受けており、今後の復興にはかなり時間がかかると思われます。

2000年度の多くの企業決算はパンデミックの影響を大きく受け、軒並み赤字又は低調に終わっています。

政府中央銀行は、公定歩合の引き下げ(お金を借りやすい状況を作る)を行って、経済の活性化に動いていますが、返済の目途が立たない債務者や企業に融資する金融機関は少なく、なかなか効果は上がっていません。

また、世界経済の低迷を受け、スリランカの産業が大きくダメージを受ける中、政府の税収入も大幅に減少しています。

政府は、公務員の出勤日を減らし給料等の固定費の削減をして、支出を減らそうとしているようですが、それも焼け石に水!遂に予算的な理由から中央銀行は、金融的な麻薬である大量のお札を刷り始めました。パンドラの箱を開けてしまったと言えるでしょう。

●政府中央銀行による公定歩合の大幅な引き下げ⇒ルピーのだぶつき

●予算対策用の裏付けのないルピー札印刷⇒ルピーのだぶつき

 

 

4.パンデミックの義援金もほとんど経済効果なし

もちろん世界的なパンデミック禍ですので、スリランカにもEU、USA、UKなど先進国や世界の友好国から義援金は集まっていますが、その資金が効果的に運用されていないのか、経済効果はほとんど現れていません。

●先進国や友好国からパンデミックの義援金が集まっている⇒経済効果はほとんど見られない。

 

5.迫るハイパーインフレの足音

外貨収入が大幅に減り、外貨建て借金が急増しているわけですから、外貨(US$、€など)の買い圧力が強まり、スリランカ・ルピー安が急激に進んできています。(パンデミック前US$1.0=Rs180程 現在US$1.0=Rs200程)

ルピー安が急激に進むと、輸入製品の値上がりが始まるのが必定...特にスリランカでは輸入額の多くを占める石油は全て輸入にたよっており、石油価格のアップは直接基幹産業のコスト増に大きな影響を及ぼします。

また昨今の原油高が追い打ちをかけ、米、豆、小麦などの生活基幹品価格はパンデミック前に比べ50%近くも値上がりしています。

このようにパンデミックによる経済低迷は、一般世帯の収入激減、生活基幹品の急激な上昇に直結して、スリランカの市民生活に大きな影響を与えています。

一部メディアでは、スリランカ経済はジンバブエ並みになりつつあるという報道も聞こえてきます。

 

6.有効な解決策はあるのか

さて、それではどの様にこの危機的状況を乗り切ればよいのか?という事になりますが、現政権が行っている場当たり的な政策では、かなり状況としては難しいと思っています。

しかし政府が経済学者や与党の話を取り入れ、長期的に経済再生政策を推進していくなら、可能性は十分ありうると思います。

まずは、即効性のある方法としては、西側諸国の有力国と通貨スワップを結ぶのも一つの手でしょう。既に中国、インドをはじめ数国とスワップ締結をしているようですが、国際基軸通貨国とのスワップではないため、いま一つ安定に欠けます。..日本とは戦前、戦後と持ちつ持たれつの友好関係を保っていますので、今後の協力関係を含め、戦略的に国際基軸通貨である日本円と通貨スワップを結ぶのが、良いのではないかと思っています。

更にこれだけでは、根本的な経済の立て直しにはなりませんので、やはり車、携帯、電気、半導体産業などの力強い基幹産業をスリランカへ誘致し地場産業として独り立ちできるよう、西側諸国からの戦略的な大型投資が必要と考えます。長期的な投資、誘致計画、開発計画を政府間で共有化し、それに沿って無駄のない国土開発(投資環境整備)を進める事が出来れば、地政学上重要な位置にあるスリランカへの投資は飛躍的に増える事でしょう。

そのためには、今は冗談でも十分とはいえない基本インフラと言われる電気、水、高速道路、港、空港などの投資環境整備を優先させる必要があります。そのためには、IMFを使うもよし、ADBを使うもよし、ODAなど国同士の契約に伴う投資や融資等を利用するのも良いと思います。

長期的な経済再生政策の推進が必須

●短期的には西側諸国の有力国と通貨スワップ必須⇒国際基軸通貨である日本円と通貨スワップが良いのでは?

●長期的には車、携帯、電気、半導体など力強い基幹産業の誘致必須⇒西側諸国からの戦略的な大型投資が必要

●誘致のため投資環境の整備優先⇒電気、水、高速道路、港、空港など基本インフラの整備急務

 

中国一帯一路「債務の罠」計画に沿って、コロンボの海上に広大なニューシティー(ポートシティープロジェクト)開発を進めていますが、今のスリランカには開発を進めるだけの、お金も余力も残っていないのです。

野党は、ポートシティー開発推進の再検討やIMF傘下で経済再生を図るべきだと政府に求めていますが、肝心の政府与党は目先の対策だけで、その意見を取り入れていません。よほど美味しい利権があるものと勘繰りたくなりますね。

 

 

ある一国の意向に従い投資や融資を受けながら国土開発を続け一部の利権者だけが潤う。..しかし蓋を開けてみたら、国民に必要な基本インフラや投資環境整備は行われておらず、一般国民だけが訳の分からない莫大な債務の返済を迫られる。..といった事態だけは避けたいものです。

 

外貨不足による急激なインフレが進みロックダウンの次はノックダウン寸前のスリランカ、今の場当たり時な政策では、遅かれ早かれハイパーインフレになりスリランカ・ルピーは紙くずになるかもしれません。

西側諸国の援助を受け、緩やかながら長期的な成長を遂げながら生き残るのか?今まで通り一帯一路に組み込まれ中国の援助を受け領土を切り取られながら準植民地として生き残るのか?はたまた地政学的な立地を生かし風見鶏的に立ち回りなんとか一国として生き残るのか、債務不遂行に陥りデフォルトするのか?

この国の国民一人一人が、どうやって生き残るべきなのか、決断すべき岐路に立たされているといって良いと思います。

 

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●2021年7月6日追加記事(重要)― 中央銀行と政府が現行政策を維持するなら、ルピーは暴落する可能性がある。

Rupee could come crashing down if Central Bank and govt. continue to hold on to current policies

 

参考記事

Central Bank printed most amount of money yesterday setting new single-day record -Daily Mirror 2021年6月29日

Modern Monetary Theory and inflation 2021年7月2日

Restrictions to control foreign exchange remittances outside Sri Lanka further extended 2021年6月29日

CBSL sets record straight on Foreign Currency Liquidity in Domestic Market 2021年6月28日

SL to borrow US $ 150mn from ADB for COVID-19 vaccination 2021年6月30日 

Govt rules out plan with IMF for debt restructuring 2021年7月2日

 

 

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