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4月27日 「債務の罠」脱出可能か、国家再建の願い(前編)

2022年4月27日/Srieko配信

 

●国際通貨基金IMFとの融資交渉、緊急融資を正式に要請、中国の恫喝外交・・

また始まりましたよ中国の恫喝外交、何の権利があってスリランカにここまで干渉してくるのでしょうかね!?・・そのやり方は、まるで闇金が「お金を大切にしなきゃ、可愛い娘さんもいるんじゃないか」と囁き、債務者を脅す手口となんら変わりません。

というのも、4月18日よりスリランカ財務相と中央銀行総裁一行様が米国に訪問、インドの仲介で国際通貨基金IMFとの融資交渉を行っていますが、スリランカ政府はIMFへ緊急融資を正式に要請、それを受け在スリランカ中国大使館の戚振宏大使が、ブルームバーグ紙のインタビューに「急な通知でスリランカがIMFに向かった影響は避けられない」「スリランカ向けの融資の可能性については今はコメントできない」と述べ現政権を揺さぶり始めたからです・・おりしも、中国は先月、中国への債務返済や中国からの輸入を援助するため、10億米ドルの融資と与信枠15億米ドルの計25億米ドルを検討、併せて人道的にスリランカ経済危機の救済を行うと発表していたばかりです。

 

 

スリランカが債務を負う国は中国だけではなく、このスリランカ政府への脅しともとれる行為は、他債権国の紳士的、協力的な態度と比べ、大変違和感があります・・なぜスリランカ現政府はそこまで、中国に干渉されなければならないのでしょうか・・一言で言ってしまえば「債務の罠」なのでしょうが、昨年の肥料の件もしかり、「中国の一大使」がスリランカの各大臣以上の影響力を持っているかの様な行為には、この国と現政権が想像以上の闇に包まれている事の裏付けと考えてよいのかもしれません。

俗にいう「債務の罠」を仕掛け、一国を崩壊寸前の経済危機に追い込んでおきながら、僅かな融資をちらつかせ、人道的に経済危機の救済を・・とは、放火した人間が消防隊のふりをして消火している、まさにマッチポンプと云うんですかこういうの・・スリランカ人も政府も相当舐められたものです 。

いずれIMF再生プランによる本格的融資は行われるでしょう、しかしこの辺のグレーな部分の整理が終わってからになるのではいでしょうか。

 

●もともとは「債務の罠」が原因

外貨不足による、ガソリン・軽油を始めとする燃料不足、医薬品不足、食料不足、おまけに連日の長時間停電等々、スーパーに行くたびに値段が上がる急激なインフレ、市民の生活が成り立たない状況になってしまったのは何故なのか!?・・このような経済危機は、30年程続いた内戦の間でも無く、内戦下でも貧しいながらも比較的経済は安定していたところから、内戦後の経済政策に起因するところが大きいと考えられます。

内戦を終了(2009年)させたマヒンダ・ラジャパクサ元大統領(現首相)は、2000年代後半、過激な内戦終了政策で西側諸国と対立し、手を差し伸べて来た中国と接近、中国も将来の一帯一路政策で、スリランカを地政学的に利用価値のある地と考えていたのでしょう・・中国の後ろ盾を得たラジャパクサ元政権は、豊富な資金援助を得ながら、圧倒的な戦力で内戦を終了させ、並行して自身の地元にハンバントタ港・マッタラ国際空港・南部高速など巨大インフラ整備・開発を優先しました。

本来なら国民生活の安定を考え、内戦で傷んだ基本インフラ(ガス、電気、水道、高速道路など)整備を最優先に行うべきところなのでしょうが・・この頃から「債務の罠に」徐々に落ちて行ったのでしょう・・巨大インフラ整備で勢いづいた元大統領は、更にコロンボポートシティー・中北部高速・コロンボ港湾建設・諸々のリゾート建設など大型投資を、主に中国資本で促進させ、一見目覚ましい発展を遂げているように見えるスリランカには、外国諸国からの中大型投資が集まって来て、2010年代中頃は一種のバブルのような状況となりました。

 

*開発中のポートシティー(コロンボ)・・投資が集まらず苦戦中

しかし冷静になって見ると、内戦終了前までは、世界の最貧国に数えられ、さしたる産業も発展していないスリランカに残ったものは、首都圏からは遠く離れ、不便でほとんど使われていない港と空港、そして雪だるま式に膨れ上がった巨大な借金でした・・2015年頃から巨大な償還案件が目立つようになり、借金の返済に借金を重ねるという、いわゆる自転車操業に陥ります・・その頃ラジャパクサ政権は倒れ連立政権に移動、しかし連立政権だけに政権の政策決定が迅速に定まらず経済は停滞、次から次へと償還期の迫る巨大な借金に耐えられなくなったスリランカ政府は、遂にハンバントタ港・ポートシティーなどを99年租借で中国に差し出します・・どちらも地政学的に重要な地域で、俗に言う「債務の罠」にはまったわけです。

 

 

*99年租借でハンバントタ港を手に入れた中国、くつろいでいるのは勿論X近平・・・

更にそれに輪をかけるように、2018年10月の政変問題、2019年4月の同時爆破テロ事件が起き、経済は大きく後退、連立政権の無政策ぶりに不満をいだく国民は、再び元大統領の弟ゴタバヤ・ラジャパクサ現大統領に政権を委ねましたが、2020年3月には世界的なパンデミックが起き、幾多のロックダウンでスリランカ経済は疲弊・・打ち出す経済刺激策は、次々と悪手で更に経済は悪化・・巨大な借金の償還に追われる現状は、まさに自力復活の万策尽きたといったところでしょうか。

 

●活発化する国民の抗議行動

生活難に直面する国民は、問題の当事者ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領とその長兄マヒンダ・ラジャパクサのラジャパクサ兄弟の退任を要求し、全国いたる所で、いろいろな業界の人達が連日デモをはじめとする抗議行動をしていますが、ほとんどの抗議行動は政治団体主導ではなくて一般市民から沸き起こっている「大きなうねり」となって全国に広がっており、事態の深刻さをうかがえます。

*スリランカ各地方都市での政府への抗議行動

 

例えば大きなところで言うと、国家行事などが行われるゴールフェイスグリーンでの抗議デモは、次世代を担う若者が中心になって「Gota(現大統領の通称) Go Home」をスローガンに3週間近く続いており、各主要都市でも「Gota Go Home」運動が活発になっています。また野党NPP主導の抗議デモ行進も南部都市ベルーワラからコロンボへ丸3日行われました。そして最大野党SJBは26日から抗議デモ行進を第二都市キャンディからコロンボに向かって行っています・・

更に、この国民の激しい怒りを受け、野党や与党の一部議員も大統領の弾劾や内閣不信任へ活発に動き始めまています。

熱しやすく冷めやすいと言われるスリランカ国民の抗議行動が、なぜ長期にわたり継続拡大しているのか・・理由は前述のラジャパクサ兄弟とその一族による独裁政権での経済危機を生んだ失政のみならず、まことしなやかに囁かれている隠し財産の噂や、同時爆破テロ事件の背後にいる真の共謀者と呼ばれる人物を、公表しない政府に対する不信感と怒りも関係しているようです。

 

*隠し財産については、昨年21年にスリランカ航空に金塊・米ドルを詰め込んで、アフリカ大陸のウガンダに送ったという話・・ウガンダへは定期便が飛んでいないため、運行履歴とGPS履歴から疑わしい運行が発覚し、事が明るみに出ました・・航空機に金塊・米ドルですから相当な金額(100億米ドル以上)が輸送されたと噂されており、何処の誰からその大金を手に入れたのか・・その大金を国に使っていれば、このような危機的経済状況は可避出来たのではないかという疑念が起きて、抗議行動が活発化しています。

ちなみに、ウガンダの外貨準備高は2021年で15億米ドルから44億米ドルに増加しているとの事、何故なんでしょうね・・何があったのか、何もなかったのか、これに付いては大変興味があります。

*専用ジェットとスリランカ航空貨物便がウガンダへ・・どうなってんの!? 4月15日News1st

 

*2019年同時爆破テロ事件については、スリランカ・カソリック教会のマルコム大司教が政府の対応に疑念を持っており、同時爆破テロ事件に何らかの形で大物政治家が関わっていたのではという噂話・・あまりに矛盾点が多く、攻撃の背後にいる真の共謀者と呼ばれる人物を公表しない政府に対する不信感と怒りから、カソリック教徒を中心に抗議行動が活発化しています。

*2019年同時爆破テロの正義を求める抗議行動 4月18日Aljazeera

 

👉後編は5月1日配信。 ●スリランカ大手企業の対応 ●スリランカ国民の国家再建への願い

 

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