Vol.117-前編 問題続出・・スリランカ完全有機農業革命!
みなさん今日は
スリランカは今年5月から続いていた危険な状況を脱し、新規感染者はかなり落ち着いてきました。
10月1日にロックダウンが解除され、経済も本格的に動きつつあり、国内のワクチン接種率も先進諸国並みに進んでいる事から、状況は今後益々良くなっていくと思われます。
また、10月より、ワクチン接種完了者(2回目接種後2週間以上経っている方)は、到着後のPCR検査、隔離などが免除となっており、空港到着後の手続きも普段通りとなっていますので、煩わしさなくご旅行をお楽しみ頂けるのではと思います。。
年末年始は一年で一番良い季節を迎えますので、ご旅行先としてぜひお勧めです。
さて例年ですと今月は農作物の収穫期・・お百姓さんの顔もほころぶ季節ですが、今年はどうも様子が違います・・その原因は肥料・・今回はその経緯にググッと迫りたいと思います。
●化学肥料から有機肥料へ
スリランカ政府は2021年4月29日、化学肥料とその他農薬の輸入禁止を決定し、現在も農民の反対意見を取り入れず完全有機農業改革を強行しています。
今回の輸入禁止も他政策同様に、ほぼ即日実施・・有機農法への移行期間が十分与えられないまま農業従事者は、急激な肥料不足と有機農法に不慣れな事によって起こる不作に直面し大混乱となっており、連日テレビ・新聞などで大きく報道されています。
特にコメ、紅茶、ゴムなどスリランカの主要農業を担う生産者の9割は、今まで化学肥料を使っており、いきなり今日から有機肥料を使いなさいと言われても、有機肥料を使った生産ノウハウもない中、生産量が激減するのではないかと途方に暮れています。
9月の時事通信サイトの記事でも紅茶農園主の話が出ていましたが、化学肥料の輸入禁止により「紅茶産業界は大混乱に瀕している」とし、政府が方針を変えない限り、紅茶の年間生産量は約3億キロから半減する恐れがありそうです。
紅茶はスリランカの主要輸出品目の一つで、300万人が従事し輸出収入の約一割を占め年間12億5千万USドル以上をもたらしています。
同農園主は、有機農業革命を主導する大統領が起用した46人の専門家の一人でしたが、8月、大統領と意見が対立・・大統領肝煎の「グリーンな社会経済」を推進する作業部会から外されました。
セイロン紅茶の危機? スリランカ有機革命の波紋(9月13日jiji.comニュース)
武漢ウイルスの影響で、昨年はGDP成長率▲3%と低迷するスリランカ経済において、輸出主要産業である紅茶、ゴム、香辛料などの生産に大きな影響が出るという事は、外貨不足によるルピー安の進むスリランカにとっては致命的です。
政府発表では、化学肥料から有機肥料に変える事で年間4億USドルの節約になるようですが、もし同農園主の言う通り紅茶の生産量が半減し、品質も低下したら、紅茶の年間輸出額は半減(約7億USドル減)どころで済まないでしょう・・
元スリランカ中央銀行副総裁で経済アナリストのW.A.ウィジェワルダナ氏は有機プロジェクトを「社会的にも政治的にも経済的にも、想像を絶するほどのコストがかかる夢」、「外貨が不足すれば日に日にスリランカの食糧の安全は悪化する」と揶揄しています・・
それでも猶予なく強硬に有機革命を推し進めようとする現政権は、何を夢見ているのでしょうか・・。
確かに有機農法は、西側も推薦するこれからの時代の農業のあり方だと思います。
ただ、このような経済の危機的状況下で今、この時期にやらなければいけないのでしょうか。もしくはほかに理由があるのでしょうか。これでは、あまりの強引さに一般市民として政府に対する疑いが怒りに変わるというものです。
実際、農業従事者の間で、政府の方針に反対し頻繁にストライキが起きています。
最近の国連サミットで大統領は、有機農業への取り組みで「スリランカ国民へより良い食料安全と栄養補給」を確保できると発言・・更に参加各国へ「世界の食料システムを継続するために大胆な施策が必要」と述べ、スリランカの後に続くよう呼び掛けた!?とか。
確かに長期的に見れば正しい事を述べてると思います。しかし・・何故今なのか。なぜ移行期間が無いのか。なぜ国民の屍を築いてまで強行するのか・・。
これを“悪政”のように思うのは、私だけではないはずです。
●どさくさに紛れて・・
一方有機肥料の輸入でも問題業者が多発しているようで、農産物育成に有害な細菌が肥料の中に入っている事による、食料の安全への疑念や土壌汚染などが挙げられています。
*エルウィナ菌による野菜のの軟腐病
ペラデニヤ大学農学部の土壌科学の上級講師W.ダンデニヤ(Warsui Dandeniuya)氏は、海藻から作られたと称する肥料の輸入について、疑問を呈しています。
これらの肥料を輸入している関係当局は「海藻から作られたものだ」と言っていますが、有機肥料は、窒素濃度が10〜15%と言われており、海藻だけを原料とした肥料には、普通これほど多く窒素は含まれてない事、また「エルウィナ菌」や「大腸菌群」は高い塩分の海水中では生存せず、土壌環境や汚染された淡水によく見られる事から、この主張が真実とはかけ離れていることを示していると述べています。
どさくさに紛れ無茶苦茶な事をする問題業者が一番悪いのですが、この国の検疫管理体制にも問題があるように見受けられます。
検疫システムが正常に機能していれば、水際で防ぐことが出来たわけですし、このような有害な細菌を含む肥料も出回る事が無かったのではないか。
すでにその肥料を使用した土壌は汚染されてしまった考えると、非常に残念に感じます。
【参考資料】
輸入肥料は食の安全の脅威となるかもしれない。 9月23日Daily Mirror
Vol.117 – 後編 ●有機肥料輸入に中国の圧力・・につづく👉
2021年10月16日 山倉義典
安全に旅してこそ楽しいご旅行 by Srieko Holidays
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