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スリーエコ・ニュース (Srieko News)

Vol.117-後編 問題続出・・スリランカ完全有機農業革命!

October 20, 2021 at 11:23 am

 

【前号のあらすじ】

スリランカ政府は2021年4月29日、化学肥料とその他農薬の輸入禁止を決定し、現在も農民の反対意見を取り入れず完全有機農業改革を強行していますが問題続出・・遂に悪徳業者まで出てくる始末・・テレビ・新聞など大手メディアが連日報道して大問題となっています。

 

●有機肥料輸入に中国の圧力

更にここ直近のニュースでは、またもや中国が有機肥料輸入にあたってスリランカ政府へ圧力をかけているようです。

現地紙の報道によれば、スリランカ農業省の公開入札により、緊急に必要とされる有機肥料の供給元として選ばれた青島海員生物技術集団有限公司(以下、海員社)は、提出した肥料サンプル内にエルビニア菌を含む有害な細菌が含まれていると、スリランカ国家植物検疫局(NPQS)より指摘されています。

これを受け、在スリランカ中国大使館は、中国企業とスリランカ当局の双方が、この問題の迅速な解決に向けて、科学と事実を尊重する原則、契約の精神に基づいて協力し、中国・スリランカの相互利益のために、誠意をもって対話を通じ、相違点に対処すべきであると述べています。

また大使館は声明の中で、供給元である海員社に対し問題を調査したところ、当該企業への報道内容が事実に真っ向から反するものであると述べています。

【参考】在スリランカ中国大使館の声明

1.  青島海員生物技術集団有限公司(以下、海員社)は、新型の海藻有機肥料の生産に特化したハイテク企業で、2000年に設立され、登録資本金は1億3200万元(約41億LKR)である。 EUECOCERT有機認証、OMRI認証、REACH認証、オーストラリア有機入力認証などに合格した製品は、欧米を含む世界50以上の国と地域に輸出されており、アメリカとオーストラリアには海外支社を設立している。

2.  海員社は、スリランカ農業省の公開入札により、緊急に必要とされる有機肥料の供給者として選ばれた。

3.  海員社は、署名された契約に厳密に従った義務を負っている。同社の生産工程では、有機肥料は600℃で殺菌されなければならず、すべての有害な微生物は高温で死滅する。これは、入札文書、契約書、信用状、および広く受け入れられている有機肥料の国際基準で要求されている基準に沿ったもだ。

4.  しかし、契約履行の過程で、スリランカ国家植物検疫局(NPQS)は、受け取ったサンプルにエルビニア菌を含む有害な細菌が含まれていると、わずか3日間の検査・分析で主張し、これが上記の報道につながっている。国際植物防疫条約では、エルビニア菌の検出には最低でも6日間を要するとされている。NPQSの早急な結論は、科学的根拠に欠けており、このように、NPQS報告書に基づいて当局が海員社の有機肥料を拒絶したことは、疑問であるばかりでなく、同社に大きな経済的損失をもたらしている。

5.  従って、大使館は、スリランカ側と中国企業の関係者が、この問題を迅速に解決するために、科学と事実を尊重する原則と、契約の精神に基づいて調整し、中国とスリランカの協力と相互利益のために、誠意を持って対話を通じて相違点に対処することができることを期待する。

 

何時もの事ですが、中国側のこの慇懃無礼で強権的な態度は不愉快の何物でもありません。

なぜ一企業の民間案件に、大使館がしゃしゃり出てくるのか。

こうした問題は、スリランカ担当省庁の裁量のはず。

こんな案件にすら中国大使館が幅を利かそうとしているですから、新聞で報道されていない、似たような案件がかなり多いのだろう・・と、中国からの借金が多く、中国に対し小さくなっていなければならないとはいえ、何だかスリランカ政府に同情したくなりました。

債務の罠⇒経済植民地といえるかもしれませんね。

【参考資料】

中国企業は有機肥料に含まれる有害細菌の話を否定 10月9日Daily Mirror

 

●紆余曲折!中国企業の肥料購入取りやめ、インド企業から緊急輸入

今朝10月20日未明、ナノ技術を使った液体窒素肥料第一陣(10万リットル:45トン)がインドからコロンボ国際空港に到着しました。

スリランカ政府は、米、トウモロコシ、紅茶、果物、野菜用として、合計5百万リットルのナノ窒素肥料輸入を計画しており既に3百10万リットルを発注済み、今週中に50万リットルを輸入する予定です。

この肥料は、マハ―シーズン(モンスーンの切り替わりのシーズンで雨が多い)の農業活動に使われ、アンパラ、バティカロア、トリンコマリー各県の農協を通じて、稲苗栽培を開始している農家に提供されることになっています。

またこのナノ窒素肥料は、インドのIFFCO(Indian Farmers’ Fertiliser Cooperative Limited)が製造し、重金属が含まれておらず、ナノ技術により窒素は植物の葉から90%吸収されます(窒素は通常、根より吸収される)ので、残留物が少ないのが特徴。

 

ところで、このナノ窒素肥料は、有機肥料と言えるのでしょうか?・・ナノ技術を使って、植物の葉からも窒素を吸収することが出来るようになっているため、使用する肥料の量も少なくて済むようですが、色々調べてみるとどうも化学肥料のようです・・つまり作物に必要な栄養をピンポイントで与え一時的に改善効果を出す肥料ということです。

有機肥料にて土壌改良をしながら、農作物を継続的に改善していくには、十分な時間と労力がかかるものです・・この半年間の失政で政府は、どれだけ有機農業について学ぶことが出来たのか!?はなはだ疑問ですが、少なくとも今回のナノ窒素肥料の輸入を見る限り、有機農業への完全切り替えには時間がかかると、理解したのではないかと思います。

また、一部化学肥料の緊急輸入をしましたが、なし崩し的に他の化学肥料の輸入検討を進めていない事からも、今回は「今直ぐは無理でも、最小限の化学肥料を併用しながら有機農業化を浸透させて、ゆくゆくは完全有機農業へ」という政府の意気込みが伝わって来ます・・

安全で十分な食生活をスリランカ国民が享受できるよう、ゆっくりでも一歩一歩有機農業に近付けるよう期待したいと思っています。😊

追伸:農業大臣はこのナノ窒素肥料の事を「特殊な肥料で、ある人は有機肥料と呼び、別の人は化学肥料と呼んでいる」と言っています。・・明らかに化学肥料なのにね(笑)

【参考資料】

インドから、液体窒素肥料第一陣が到着 10月20日Daily Mirror

承認された化学肥料、除草剤などが輸入許可 10月19日Colombopage

インド、ナノ窒素肥料を緊急供給 10月18日News1st

スリランカ、100%有機農業計画を中断 紅茶生産への打撃受け 10月19日AFP時事通信

 

Vol.117 – 続編 ●肥料でも中国の戦狼外交・・につづく👉

2021年10月20日 山倉義典

 

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