Vol.134 – 経済崩壊一年&スリランカの現在地👦
私達の住むスリランカ西海岸は、南西モンスーンが活発になる季節を迎え、毎日海からの湿った風が吹き、曇りがちの日が続いています。
テレビ報道では、反政府デモの報道もあるものの、概ね観光客回復、債務再編の進捗好調、IMFを始めとする国際公共機関から援助投資&融資の増加などが連日大々的に報道されいて、一見すると本当にスリランカ経済が堅調に回復してきたかのような報道がされています。
今回はこのような状況の中、「現在のスリランカは本当はどうなのか」を私の感じるままに伝えたいと思います。
あれから1年、ガソリンを始めとする燃料不足、数時間に及ぶ停電は無くなり、一般的な物不足(医療品を始めとする輸入品の物不足はまだ続いている)も緩和してきたかなと実感でき、物価も高値安定なものの一年前の同時期に比べ見違えるほどに回復してきているように見えます。
経済危機からの復興支援という事で、IMFを始めとする国際公共機関からは援助投資&融資が活発化しており、また中央銀行の政策金利引き上げ(年利約15%)に伴う、経済危機での海外脱出組、海外出稼ぎ組からのスリランカへの外貨送金が活発化しており、一時的に外貨がスリランカに集まってきており、急激なルピー高になっていて海外から物を購入しやすい状態になっている推測されます。
一方、スリランカの主幹産業である製造業(衣類、加工製品)は低調、農業(紅茶、ゴム、椰子など)は低調、観光業は回復基調とはいえワケアリ外国人中心で期待した程外貨を獲得できていない状況ですので、依然として現在のスリランカは輸出産業(外貨獲得産業)で、構造的に十分外貨が稼げていないといって良いでしょう。
という事は裏を返せば、輸出産業が飛躍的に伸びない限り、海外援助投資&融資、海外組からの送金が一段落すると、再び外貨不足が発生し経済状況が悪化すると考えられますので、至急国内輸出産業の成長ドライブを立ち上げなければいけません。しかし、今のところ相も変わらず一部政治家の懐が潤う大型箱物投資の話だけで、具体的な産業投資(自動車、半導体、バッテリーなど成長産業)は皆無のようです。
また、それに輪をかけてテレビの連日の投資報道などに、国民は揺動され浮かれ始めていて、「IMFの融資が始まればスリランカ経済の復興間違いなし!」と考えている国民も多く、再び国民は浮かれ危ない状況に入ってきたかなと感じます。
実際IMFを始めとする国際公共機関からの援助投資&融資額は、債務総額(US$500億以上とも言われている)からは程遠く、経済復興のための「呼び水」でしかない事を忘れてはならないと思うのですが、どうも大多数の市民はコロナも終息しIMFの融資も始まるということで安心しきっているのか、そこら中でお祭り、各種パーティーが派手に開催され、最近は「どこがデフォルトしている国なのか?」と思う事が多々あります・・余計なことかもしれませんが、その資金は海外の国から借りたお金ではないの?と一度聞いてみたいのですが・・(笑)
●根強く残る「債務の罠」と課題
国家財政破綻、国民の大規模抗議行動、政変・・・これだけの事が一年前に起きた割には、その責任追及をして問題解決に本腰をあげず先送りしているスリランカ政府は、スリランカ国民の未来を真剣に考えているのか甚だ疑問です。
復興支援に伴う、IMFを始めとする、国際公共機関から融資&投資が活発化している今こそ、国民にスリランカの進むべき道を問うべきではないでしょうか・・
皆さんご存知のように、先月のG7が行われたタイミングで日本を訪問たウイクラマシンハ大統領は、前大統領のラジャパクサ派で固められた国会で選ばれた大統領で、市民選挙で選ばれた大統領ではありません。
前職の首相時代から西側諸国との関係が深く、IMFとの交渉も担当していた関係上、ラジャパクサ大統領失脚後、国会で大統領に選出されました。
したがって、背後には国会=ラジャパクサ一族の力が膨大に働いており、中国とは切れない関係にあるのは、容易に想像できます。
最近の中国関係の記事を列挙しただけでも以下
1、中国の石油会社Sinopec社のスリランカ支社オーナーの娘さんと、エネルギー大臣の結婚疑惑 5月26日記事
2、中国の石油会社Sionpec社のスリランカ進出記事 5月22日記事
3、ラジャパクサ一族の血筋を引くロジー氏が再び政権に復活。
https://www.dailymirror.lk/breaking_news/Rosy-appointed-Presidential-advisor/108-259923
4、Toque monkey(スリランカ固有種)お猿さん輸出関係の最近の動き
5、その他、中国がハンバントタにレーダー基地を建設するのでは?ハンバントタに石油製油所を建設するのでは?などの報道がありこの辺の動向も気になっています。
これらの報道が全て政策的に行われているとは一概に言えませんが、残念なことに現役大統領であるウイクラマシンハ氏の後ろでは、未だに前ラジャパクサ大統領色=中国が色濃く出ている政権の動きとなっているように感じています。
また、前大統領のラジャパクサ派が固める現国会は、一年前の国家破綻のどさくさに紛れ、「選挙用紙が無い」・「選挙執行の資金が無い」などの訳の分からない理由をつけ、今年3月に行われるはずだった地方選挙を始め、諸々の選挙の引き延ばしに動いている事は明らかで、大統領が変わっても差ほど政策が大きく変わらない事に驚きはないでしょう・・多分ラジャパクサ派の本音は、昨年の大惨事が風化し、国民の怒りが収まるまで、出来るだけ時を待って選挙を行いたいと考えているのでしょう・・そういう意味では過ちを繰り返さないためにも、早急に国民の意を問い、反映されるような政治体制に刷新する事が必要です。
すなわち、IMFを始めとする国際公共機関からの融資&投資が正しく使われるためにも、一刻も早い大統領選挙、一刻も早い国会議員選挙、一刻も早い市町村長選挙を行い、国際社会からの援助を国民の意志に従いながら正しく使われる事が肝要という事です。
●西側諸国は援助支援を加速しているが・・
どんなに西側諸国が莫大な援助、支援をしようとも、それを受け入れる政権は国家破綻前と顔ぶれが差ほど変わっていない現実・・これって、札付きのなXず者(XX賄常習者)集団に、湯水のように資金を渡している事と何ら変わらないと思います・・国民は、その資金を国民のために正しく使ってくれる人を選びたいのでしょうが、選挙をさせてもらえない!というのが、現在のスリランカを象徴しています。
一方国民は、各種税金の見直し、電気ガスを始めすべての物が2倍3倍となっている今、経済危機の前と比べ収入の差して上がらない一般国民(国民の75%以上といわれる公務員(公務に関わる人含む)を始めとする一般労働者階級の人々)の生活は、更に困窮の極みにあります。
日本主導での債務再編を始めていますが、中国絡みの債務では、2国間及びプライベートセクター(実は国絡み)債務交渉での、中国の協力具合も気になっています。
前項で「IMFを始めとする、国際公共機関から融資&投資が活発化している」と述べましたが、全債務の半分以上を占めるといわれる中国絡みの債務を何とかしないことには、国際金融機関が融資&投資した資金が、中国への債務返済に充てられるわけですから大きな注意が必要です。
やはり、融資&投資してもらった資金は、しっかり国民のために有効に使われるよう、スリランカ国民は自分達の意志を代弁する代表者を選ぶべく、早急に大統領、国会議員、地方議員の選挙を行い、新たな体制での国づくりを始めることが大切なのではないかと思います。
返せない程の莫大な金を、国(国民)を担保に借りて返せなくなった政府も問題ですが、返せないと分かっていて貸した某国はもっと問題です・・この場合スリランカ国民は被害者であり、次に選ばれる国民お代表は、特に某国にはこの際債務返済義務を放棄しては如何でしょうか・・やってみる価値はあると思うのですが・・😊
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2023年6月15日 山倉義典
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