Vol.81 – 今度は政局大混乱!大丈夫かスリランカ!?
皆様、こんにちは
日本は、紅葉の美しい時期、早い所では雪が降り始めているのではないでしょうか。温泉好きの私には、日本が恋しくなる時期でもあります。
スリランカは、長かったモンスーンの時期も終わり、ここ1週間程は穏やかな日が続いています。12月、1月は気温も湿度もぐっと下がり、大変過ごしやすい時期、そして来年4月までは、お天気の多い旅行シーズン到来です。
さて今回は、FBでも逐次情報発信していますが、スリランカ政局の大混乱...前回、経済の大混乱をお伝えしたばかりなのに...自身の主観を交え、お伝えしたいと思います。
ちなみに、経済&政治共に大混乱していますが、今のところ市民生活は平常そのもの!治安は安定しておりますので、スリランカをご旅行の皆様は、危ない所に近づかなければ、過度な心配をする必要はないかと思います。
事の始まりは、10月26日、現大統領シリシナ氏が、現役首相ウイクラマシンハ氏に首相解任を通知し、ラジャパクサ前大統領を新首相に任命したことに始まります。並行して、シリシナ大統領が党首のSLFP(スリランカ自由党)を中心にしたUPFA(統一人民自由連合)は、ウイクラマシンハ首相の率いるUNP(統一国民党)との連立政権から離脱、「打倒ラジャパクサ政権」をスローガンに2015年1月の大統領選挙に大勝し発足した連立政権は、突如解消しました。
ラジャパクサ新首相は、2015年1月の大統領選挙に敗れたものの、同年8月の選挙でUPFAの国会議員として復活し、今年の2月の地方選挙では自身がサポートしているSLPP(スリランカ人民党)が大勝利したことを受け、UPFAにて勢力を拡大してきました。
その後、この現首相ウイクラマシンハ氏の解任を巡り、両陣営が激しく対立、政局は大きく混乱しています。
そもそもこの解任劇を巡る大混乱は、シリシナ大統領が指名する新首相ラジャパクサ氏の就任を確実にするために憲法を軽視した、強権的な進め方に問題があるようです。スリランカの憲法は、2015年、ラジャパクサ前大統領の強権政治を反面教師として、大統領の権限縮小と首相や国会の権限拡大を目的に改正されています。
シリシナ大統領は、新首相任命直後、新首相の不信任案可決を防ぐため、11月中旬まで国会を休止宣言、議員の多数派工作を行いましたが、思うように進まないと見るや、一方的に11月9日に国会の解散&1月5日に総選挙を行うと宣言します(憲法では2020年以前に国会を解散する場合、議員の三分の二の賛同が必要)...しかし、現首相ウイクラマシンハ氏は、一連の大統領の強権政策に対して最高裁判所へ提訴、そして、11月13日最高裁判所は、10月26日以降の現首相及び内閣解任は無効、12月7日(総選挙開示日:1月5日総選挙)までは、元の政権(ウイクラマシンハ首相(内閣)に戻し、憲法の統制下進めるよう命令を下しました。翌日11月14日に国会が開催され、新首相ラジャパクサ氏への不信任案が賛成多数で可決されています。
しかしこの国会決議を、シリシナ大統領は今日現在も拒否しており、国会は右へ左へ大混乱を起こしています。
**今回、大統領が法に触れている、又は問題行動と思われる内容は以下となります。
1.首相の解任及び任命権(現在の憲法では大統領に首相解任権はない。また任命権はあるが指名権(指名権は国会にある)はない解釈されている)
2.国会の解散権(現在の憲法では2020年以前に国会を解散する場合、議員の三分の二の賛同が必要とされている)
3.拒否権(国会=民意で決められた事(新首相不信任案)を拒否して、国会の機能を停止させている)
法治国家で育った私達には、国会は民意の集約された所であり、そこでの決定はたとえ大統領であろうとも、簡単に覆すことができない、尊ぶべきものだと教育されてきました。大統領が法を軽視し、強権を使って物事を進めていくのであれば、スリランカ国民は、2015年の大統領選挙(強権政治を行ったラジャパクサ大統領失脚)の時のように、勇気を出して再び立ち上がる事でしょう。
こういう時期ですので、私達は外出を出来るだけ控え、新情報を取るべく日夜TVにて国会中継を注視(シンハラ語なので内容はほとんどわかりませんが)していますが、その国会の中で、同情するくらい頑張っている人を見つけました。
「ジャラスリヤ議長」...百戦錬磨の国会議員からのヤジ、罵声を無視するのは朝飯前、時にはヤクザと見間違えるような議員達が小突き合い、議長席を囲み、実力行使(暴力)に出る中で、自身の危険にさらされているにも関わらず、冷静に決議事を宣言していくお姿、時には決議内容を公文書として発行する毅然としたお姿は、かなり好感と敬意の念をいだきます。11月16日などは、唐辛子、六法全書、椅子などを投げられ、議員達が大暴れしている中で、警官に守られながらも、自分の仕事を着実に遂行していましたね...本当にお疲れ様ですと言いたくなります。以前はビジネスマン、そして大使といった堅実な職務を経験されているジャヤスリヤ議長は、やはり多くの議員とは責任感が大きく違います。口先だけの人気取りか!実務の伴った堅実さか!との違いとでも申しましょうか...威圧的な国会議員の中で、際立った存在だと言えるでしょう...立場上、嫌がらせや脅迫など多いと思いますが、これからも堅実に民主主義と立憲国家を守っていってもらいたいものです。
法を自身の都合のいいように解釈し、首相の解任&指名権、国会の解散権などなど、多岐にわたる法を軽視した現大統領のやり方には、日本をはじめ、欧米諸国より大きな不安が伝えられており、大型投資のサスペンドをはじめ、今後の企業活動への影響が懸念されています。ただですら、成長ドライバー不在で経済が混迷している時期、早くこの政局の混乱が収まらなければ更に難しい局面に向かっていくでしょう。
世界情勢が目まぐるしく変化する中、今は国内で争っている場合ではありません、スリランカ国民全体でこの難しい局面を乗り切っていかなければならない状況なのです。
歴史を振り返れば一目瞭然、列強国は、ボーア戦争しかり、アヘン戦争しかり、当時の政権に理不尽な言いがかりをつけ、争いを起こしその国を支配してきました。今行っている政争は、一見国内の政権争いに見えますが、見方によっては現政権(多国主義派)へのラジャパクサ派(親某国)の代理戦争としての裏が見え隠れします...このままではスリランカの子供達、孫達の代には某国のように、デモクラシー(民主主義)、コンスティテゥーション(憲法:法治国家)という言葉は、言葉だけで実体のないものになるでしょう...議会は目先の既得権に固執するのではなく、大局的な目でスリランカの今後を考えて、党派を超え動くべき時期なのではないでしょうか。
<弊社プロフィール>
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2018年11月19日
山倉 義典
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