Vol.108 – 空港再開とコロナ@スリランカ
皆様こんにちは。
日本も2月頭に終了予定だった国家非常事態宣言が一か月延期と、旅行業界をはじめとする各種産業は再び忍耐の時期かと思いますが、お元気にお過ごしでしょうか。
世界中で猛威をふるうコロナは、南ア型、英国型、ブラジル型..と変異株が増え続けており、ワクチンの効果が余り望めない変異種もあるとかで、収束の目途の立たない不安な世の中になっています。
先は分かりませんが、ワクチンの効果や供給状況をみますと、少なくとも今年いっぱいはコロナと共存しなければならない状況なのでは..と思うと気持ちが折れそうになります。
コロナ第二波、第三波で世界中がロックダウンや隔離など自粛ムード続く中、1月21日にスリランカ政府は旅行者向けにコロンボ国際空港(BIA)とマッタラ国際空港(MIA)の両空港を再開しました。
「ええっ!どういう事?世界中の流れと逆行しているじゃない。こんな状況下で空港再開して大丈夫なの!?」と思われた方は、多くいらっしゃるのではないかと思います。
スリランカの直近のコロナ状況を知れば、更に疑問と疑念が増すことでしょう!
というのも国内では、昨年10月頭から広がっているコロナ第二波の感染拡大で、今年1月に入り一日当たりの新規感染者の過去最多数を何度か更新し、ついに2月に入って1000人近くとまたまた過去最多更新!更にUK型異変種感染者も数か所で報告され感染増加は衰えることを知りません。
スリランカ・コロナ感染者数推移 ●グラフから10月以降感染拡大が止まらない事を読み取れると思います。
当然病院のベッドは限られた中、感染者は増大するわけですから、病院だけでは対応が間に合わず、リゾートホテル等も緊急医療施設(病院として入院)として使われて始めています。
また、その緊急医療施設も足りなくなってきたため、1月下旬にはコロナ陽性者であっても、軽症者の場合は二~三日自宅療養する事となりました。
感染者が出た場合、その周りの家族や接触者などは隔離しなければいけません。
数にもよると思いますが、感染者の多い場合は地域全体の隔離、さほどではない場合は家族や接触者の政府の定める隔離施設への入居隔離となります。感染者の数倍の家族や知人がいる事を考えると、10月の第二波で感染者が急激に増えましたので、隔離施設の供給が追い付かず、地域全体の隔離処置が増えたのは仕方のない事だったのでしょう。
更にコロナの影響で、主に職を失った海外からのスリランカ人出稼ぎ労働者の帰国希望者が多く(ずいぶん帰国しましたが、1月末時点でまだ数万人の帰国希望者が残っていると言われています)その人達も、帰国後二週間程の隔離が必要なため政府の隔離施設が間に合わなくなり、当初より多くのリゾートホテルが隔離施設として使用されています。
更に更に、コロナ感染者が増加する中、スリランカ政府は「コロナは完全にコントロールされている」とポジティブ・キャンペーンを張り、ヘルス・ガイドラインを守っていれば安心だという雰囲気を作っており、それを信じる一般市民は週末ともなると郊外のリゾート地に出かけ、ますますコロナが広がっていくという悪循環です。
なんだか日本のGOTOに似ていますが、これは似て非なるもの!日本の場合は政府から業界に補助金が出ていますが、スリランカ政府は補助金など一切なし、業界が自主的に負担といった構図です。(笑)
ということで、国内の状況だけまとめてみても
●感染者のベッド不足 👉 リゾートホテルを緊急医療施設として使う。
●感染者の家族又は接触者の隔離施設不足 👉 リゾートホテルを隔離施設に使う。
●スリランカ出稼ぎ労働者の隔離施設不足 👉 リゾートホテルを隔離施設に使う。
●一般市民の旅行宿泊 👉 リゾートホテルに宿泊する。
もちろん、それぞれの用途別にホテルは分けられていて、一般市民と隔離中の人々や陽性者は同じホテルに泊まることはありません。
しかし、リゾート地という地域で見ると、あるホテルは緊急医療施設として使われており、その隣のホテルは隔離施設に使われており、そのまた隣のホテルは一般市民が宿泊して、プールサイドでくつろいでいるという事が現実に起こっており、まこと奇妙な状態になっています。
この奇妙な状態に今回の空港再開で、海外から来た旅行者向けのホテルが加わりますので、増々リゾート地は奇妙なキテレツ状態に見えてきます。
ところで、旅行者にはバイオバブル(入国後隔離なし)の入国が認められていますが、以下の厳しいガイドラインが課せられます。
●スリランカ便ご利用前96時間以内のPCR検査陰性証明
●ETA(スリランカ入国VISA)取得時にPCR検査費用(空港到着時必須、他滞在日数による)及びコロナ保険費用の加入
●政府承認のレベル1ホテルに宿泊要(到着後14日間、14日より先は自由)
●政府承認の観光地のみ訪問可能(他訪問地は訪問禁止)
●公共交通手段禁止、一般人との交流禁止 他諸々
こんな制約を課されてまででも、少ないですが旅行者の方々のいるのには大変驚いています。..
しかも国内ではコロナ感染者が増えている状況では、旅行者にとっても、一般市民にとっても感染の危険が伴いますし、ビクビクしながら旅行しても第一楽しくないと思うのですが、どうなんでしょうか。
旅行業を営む私達としては、もちろんお客さんにたくさん来て欲しいのは山々ですが、楽しんで頂けない旅行では私達も望みません。
案の定、空港開港から3週間が経ちましたが、一部の特定な観光客を除き、政府観光局が期待していたような数字には程遠いようです..おかげで、海外からの観光客専用ホテル(レベル1ホテル)はシワ寄せを食い、週末でも数部屋と閑散としていて、寂しいゴーストホテル化しています。
余りの外国人宿泊者の少なさに、海外観光客専用ホテルのいくつかは、レベル1ホテルの登録を辞退し、ローカル客に傾注するホテルも出始めています。
私の個人的な見解ですが、ワクチン接種が安定し、効果が見えてきた頃人々は動き始めるのかなと勝手に思っています。それにはあと一年はかかりそうな気がしています。
上記のような多くの制約を課されてでも、スリランカに来たいという人は多くはないと思いますし、世界各国が空港閉鎖、ロックダウンしている中、スリランカだけ空港を再開しても、来たくても来れないのではないでしょうか。..周りが全く見えていない!世界の情勢が全く読めていない!まさに今のスリランカにぴったり当てはまる言葉だと思います。
目の前の大災害に向き合わず、経済優先の前のめりの政策は、いずれ国民の涙となり帰ってくることを忘れないで欲しいと思います。
この国は、一部の権力層が右といえば右に動き、左といえば左に動く傾向が強くありますが、世界情勢を謙虚に見習い、国民から教えを乞う事こそが今一番大切な事なのではないでしょうか。
<弊社プロフィール>
安全に旅してこそ楽しい旅行、Srieko Holidaysはいつもお客様の安全を第一に考えて旅行のお手伝いをしています。
山倉 義典 2021年2月10日
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