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スリーエコ・ニュース (Srieko News)

Vol.53 – 希少動物が危機に直面している@スリランカ

August 31, 2015 at 1:40 pm

暴走ジープに跳ねられて犠牲なったと思われるスリランカ豹@ヤーラ国立公園(by Sunday Times) 

皆様

 

8月は夏休み!子供のころ年で一番の楽しみだったせいか、8月が来るとなぜか体が動かなくなり、忙しいのにどこかに出かけたくなる、「休日モード」になってしまうのです。

常夏のスリランカに住みながら、子供だった頃の夏休み癖が抜けない...どうしてですかね!?(笑)

さて中国の影響で世界経済が混とんとする中、株価の暴落、朝鮮半島の緊張、異常気象によるグローバルな被害等、世界は慌ただしく動いていますが、いかがお過ごしでしょうか。

こちらスリランカも、8月17日に国会総選挙が無事終わり現首相ラニル氏率いるUNP及び連立政権は過半数を獲得!ようやくシリシナ大統領政権と国会のネジレがなくなりました。

今まで保留されていた多くの重要政策がスムーズに進み、また数々の前大統領政権下で公然と行われてきた汚職を追及して、国民が納得できる政治を進めていくことを期待しています!!

 

今回は、いろいろと伝えたいことがあるのですが、スリランカの希少動物が危機に面している二つの事例を伝えたいと思います。

まずはスリランカ南東に広がるヤーラ国立公園から。

この国立公園は、世界一ヒョウの密度が高いと言われる国立公園で、会える確率が非常に高く、またスリランカのリゾート地に比較的近いことから、シーズンには毎年世界中から多くの人々が訪問しています。

野生のヒョウは、ライオンとは違い群れで行動はせず、子育時期を除きほとんど一頭で行動する合が多く、なおかつ迷彩色の体を持つため、サファリではなかなか出会えない貴重な動物なのです。

事件は8月29日にヤーラ国立公園内の道で成獣のメスのヒョウの遺体が発見されたことです。

皮膚にはひっかき傷のような外傷はなく、首の骨(脊髄)が折れたのが死因だとの事、遺体の近くを野生のゾウが通り過ぎた跡があったため、見方によっては野生のヒョウはゾウにやられたのかもしれない!?という推測も成り立つのですが、成獣のヒョウがゾウの怒りを買って殺されることは殆んど無いといってよいでしょう。

関係当局は高確率でスピードの出し過ぎたジープに跳ねられとみています。(跳ねたジープはまだ見つかっていないとの事)Leopard Yala-1-1-210

ヤーラ国立公園を訪れるほとんどの訪問者は、野生のヒョウを一目見たいという人ばかり....園内は常時100台ほどのジープが朝6時(ゲートオープン)~夜6時(ゲートクローズ)まで駆け回っているのです。ピーク時は200台以上の時も.....サファリ会社のジープドライバーはお客様の夢をかなえてやろうと必死(チップの額に影響)!お客様は夢にまでみた野生のヒョウに会いたいという一心!必然的に園内は殺気立っています(私も訪問時異様な雰囲気を感じましたことが多々あります)

園内には動物保護の為、25km速度制限のルールがありますが、しかし現実は、一度ヒョウを見つけると、ジープは仲間のジープに携帯電話で連絡を取り、仲間のジープはその仲間に連絡するという仕組みになっていて、それぞれのジープがヒョウのいる場所に制限速度を無視し急行(70km~80kmの猛スピード)するのです。また、閉園時間18:00になると公園御ゲートが閉まるため、これも制限速度を無視しゲートに急行します。更には園内に政府系のバンガローがあり一般客も予約をすれば宿泊できるのです。この場合、バンガローにレンジャーが常駐しているのですが、ある筋の話ではレンジャーを買収し、こっそり禁止されているナイトサファリに出かける輩もいるらしいのです。

ヤーラ国立公園内でヒョウが暴走ジープに跳ねられ死んだケースは初めてではありません(近年では2011年)、また他の動物たちも暴走ジープの犠牲になっています。

携帯ネットワークプロバイダーは関係当局の要請を受け、ヤーラ国立公園内のネットワークサービス制限をこの8月より始めましたが、この事件は制限期間以外のところで起きました。

ここまでくると、ドライバーを含め訪問者一人一人のモラルの問題だと思うのです。Leopard-2 Yala-170

くれぐれもヤーラ国立公園の訪問者にはジープ運転者に暴走は許さない決意を期待したいところです。

ヤーラ国立公園は動物園ではありません。やむなく住む場所を制限された野生動物達が食物連鎖と野生というルールを守って生きている大自然のです。だからそこを訪問する人々は野生動物に出会ったときに動物園では得られない感動を得るのです。

暴走以外の原因もありますが、今回のヒョウは今年になり5頭目の犠牲です。ヤーラに生息するヒョウは50頭ほどといわれていますので、年1割以上が犠牲になっている計算、このままでは確実にヤーラ国立公園からヒョウがいなくなると思います。

このかけがいのない大自然を、次世代の子供たちに伝えるためにヤーラ国立公園を訪問する人たちは今一度野生に接する時のモラル(マナーとルール)を考えてほしいと願っています。

*ヤーラ国立公園ブロック1は例年通り整備の為9月7日から1か月間閉鎖となります。

 

 

 

 

次はスリランカ西南の街ミリッサと北東の街トリンコマリーから。

 

Whale Watching-2-500

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スリランカ南西の街ミリッサは、インド洋シロナガスクジラに会える街として10年ほど前から世界中から注目されるホットスポット!またトリンコマリーも内戦後5年ほど前からインド洋シロナガスクジラに会える地として注目を浴びています。

シーズンはミリッサ(11月~4月)、トリンコマリー(2月~4月)でシーズン中には毎年世界中から多くの人々が世界最大!夢のシロナガスクジラを一目見ようと集まってきます。

スリランカ近海にいるクジラは主にシロナガスクジラ(体長25m程)で超大型のクジラです。

たまにニタリクジラ、マッコウクジラ、ナガスクジラ、シャチ、などが現れますが圧倒的にシロナガスクジラが多く、その迫力はメガトン級!

一方シロナガスクジラは非常に繊細な動物で、大型なのに音に敏感、更に泳ぐスピードが速いためこちらから近づくのは大変難しく危険です(事故が起きた時は命の危険があります)、また頭が良いため嫌なことをすると、二度とその海域には近づきません。

従って、シロナガスクジラの観察は、クジラのスプレーを頼り300m程まで近づき、エンジンを切りクジラの出現を待つ、クジラが近くに現れたら、大声を出さずクジラから船に近寄って来るのを待つ!船と並走したいようなら船をゆっくり並走するといったような細かい気遣いが必要なのです。

ところがクジラ観察が世界的に有名になり、以前からある老舗業者に加え新規参入の業者(多くはクジラ観察船のライセンスのない単なる漁師船も多い)なる無許可の業者が増えピークシーズン(クリスマス休暇、新正月、旧正月など)にはクジラ一頭を20隻ほどの船が囲むことも.....囲むだけではなく大きなエンジン音を轟かせながら数十メートル程まで近づこうとする船も….大きな体の割に繊細なシロナガスクジラは行き場所を失い、浮上したら普通は10分ほど海面を泳ぐのですが、さすがにたまらず急潜水といった光景をよく見かけます。

この様な事を繰り返していると、スリランカの海域に豊富なエサ場があるとはいえ記憶力の良いシロナガスクジラはシーズンになっても来なくなるのではないかと危惧されています。

現に専門家の話では、クジラが来なくなった海があると聞いていますし、スリランカ周辺の子個体数が減ってきているとの話も出ています。(2012~13年のトリンコマリーにはほとんどクジラは来ませんでした)

更に残念なことに最近ネット上でクジラと簡単に泳げるような誘い文句で集客している輩(ホエールスイム業者)がいるようです。

スリランカ近海にいるクジラはシロナガスクジラで体長25m程の大型のクジラです。よくマッコウクジラと楽しそうに泳いでいるのどかなTV映像がありますが、それとは根本的にクジラの性質が違います。Giant Whale -4-210

マッコウクジラやザトウクジラは一般的に人に興味を示すようですが、シロナガスクジラ系は私の経験上人と戯れて泳ぐようなことは決してないと思います。

シロナガスクジラは水中で人を見つけると必ず急潜水します。これはクジラ観察船同様に潜水者を嫌がっているとしか思えません.....野生のシロナガスクジラと楽しそうに戯れている映像がありましたら教えてもらいたいものです。

シロナガスクジラが嫌がること(ホエールスイム:クジラと一緒に泳ぐ試み)をして、クジラが急潜水するほんの一瞬を水中で見ることが、クジラと触れ合うことなのでしょうか??

そのクジラへの嫌な行為によって、スリランカの海域に豊富なエサ場があるとはいえ記憶力の良いシロナガスクジラはシーズンになっても来なくなるのではないかと危惧されています。

ボート業者のオーナーはお客様の夢をかなえてやろうと必死(直接収入に影響)!お客様は夢にまでみた世界最大夢のシロナガスクジラを間近で見たいという一心!必然的に海上は殺気立っています。

先ほどヒョウの件でも申しましたが、ここまでくると、ボート業者とホエールスイム業者を含め訪問者一人一人のモラルの問題だと思うのです。

訪問者一人一人がしっかりしたモラルを持ち、クジラ観察の観光船業者やホエールスイム業者に暴走は許さない決意を期待します!

海は水族館ではありません。大洋を住みかとする生物達が食物連鎖と野生というルールを守って生きている大自然のです。だからそこを訪問する人々はそこに住む生物に出会ったときに水族館では得られない感動を得るのです。

この大自然の恵みを受けた奇跡の海を、次世代の子供たちに伝えるためにホエールウオッチング、ホエールスイムに参加しようと考えている人たちは、今一度!野生に接する時のモラル(マナーとルール)を考えてほしいと願っています。

 

*スリランカ防衛省は最近この無許可の業者(ホエールウオッチング / ホエールスイム)達を大問題として、昨年からかなり厳しい取り締まりを行っています。

水中での撮影(単にクジラと泳ぐホエールスイムも同様)は防衛省の特別許可が必ず必要です。許可書を持っていない業者とは付き合わないことが重要です!

 

PS: 弊社もNHK、他局をはじめシロナガスクジラの水中撮影をコーディネートしますが、安全面と自然保護の立場から海洋調査、TV、雑誌取材以外の方には手配を行っておりません。

弊社が水中撮影をコーディネートするときは、経験豊富なプロのダイバーであることの確認、防衛省からの特別許可(単にクジラと一緒に泳ぐときも必要です)はもちろん、もしもの時のため病院の手配、AED&他応急処置用品の携帯等を行い、事故が起きた時に備えています。また、自然保護をの観点から、クジラへの負担を極力減らすため接近する時のノウハウを蓄積しています。

                                                                                                                                                                       2015年8月31日 山倉義典

<9月6日追伸> 今回のヒョウの死を無駄にしてはいけない!

スリランカ首相のラニル氏は「このヒョウの死」を受け、今後は国立公園及び自然保護区に住む「生きとし生けるもの」にとって安全な環境を保つため、園内の速度制限厳守を徹底すべく、旅行者への入園者制限等、更なる効果的な対策を検討しスリランカ政府として全国の国立公園&自然保護区の制度強化に乗り出すと異例の声明を出しています。

ヒョウの死は内戦終了後、前政権下の観光業界で行われてきた観光地周辺の無計画な乱開発が引き起こした悲劇といえると思います。弊社は旅行業界の一員として、度々野生(陸上生物、海洋生物)保護の大切さを発信してきましたが、今回のラニル氏の声明大変期待をすると同時に、気持ちが引き締まる思いです。

この類稀なる奇跡の楽園を次世代の子供たちに伝えるために、今一度!野生に接する時のモラル(マナーとルール)を考えていきたいと思います。
「流石スリランカ!世界最古の動物保護区を創った国だ」と世界中から言われるように.....

                         2015年9月6日 山倉義典

www.sriekov2.loc も宜しくお願いします。

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